モルモン教会の考察
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 先日、反モルモンの方から「神を造る人々(THE GOD MAKERS)」というビデオをお借りしました。これは私も伝道中に名前を聞いたことがあり、ぜひ一度観てみたいものだと思っていましたが、今回ご好意により拝見する機会に恵まれました。その内容の紹介と感想などを述べたいと思います。

このビデオの作成はバプテスト教会だそうです。1982年から85年ごろに作られたものだと思います。ナレーションの中でモルモンの会員数が500万人、神殿の数が40と言ってますのでそういった情報は多少古いものですが、この中で描かれているモルモン教会が改善しなければならない問題は現在(2000年)でも依然として存在します。これはモルモン批判のビデオですがモルモン教会がこういった訴えに真摯に耳を傾けるならば、製作者の意図を汲み取り、自らの改善に大いに役立つ物となるでしょう。

教会を批判する出版物などは信仰を弱くするので、見たり読んだり関心を持たないようにするという人がいます。実際にモルモン教会はそういう指導をしています。しかし私に言わせれば、批判物を読んだだけでなくなってしまうような物など信仰ではないのです。その程度の信仰しか育めないモルモン教会の方がどうかしています。またある人は批判物は御霊(みたま)を受ける妨げとなるので一切見るなと言います。これも全く不可解な話です。なぜならモルモンの教義によれば、御霊は真理とそうでないものを見分ける助けをしてくれるものです。自分がまずそれを見て、それから、御霊の助けによりそれが真理かどうか判断できるのです。見る前に判断するというのであれば、それは一体何によるのでしょう?教義と聖約8章2節には、「あなたに降ってあなたの心の中にとどまる聖霊によって、わたしはあなたの思いとあなたの心に告げよう」とあります。この聖句によれば、「思い」と「心」、すなわち神がすべての人に与えられた「理性」と「良心」に働きかけるものが御霊です。モルモンに対する批判物であろうと賞賛物であろうと、その中にある真理とそうでないものを、「理性」と「良心」によって見分けることを可能にしてくれるのが御霊なのです。批判物に接することによって受けられなくなるものは御霊ではなく、「高慢な自尊心」ではないでしょうか?モルモン教会を真に愛するならば批判物でさえ謙遜な態度で受け入れ自省の糧とすることができるはずです。

前置きが長くなりましたが、この作品は一応ストーリーとして、2人の男性が法律事務所を訪れ、家族を不幸にされたのでモルモン教会を告訴したいと相談を持ちかけるという形になっています。話を聞いている弁護士にはモルモンの知り合いがいますが教会の詳しいことを知りません。そこで2人の男性はいろいろな資料や関係者の証言を紹介するという構成です。しかしこれは物語作品ではなく、実在の人物に対するインタビューをまとめたもので、そうした生の証言からモルモン教会の実態を描き出そうとするものです。教会指導者、元教会員、反モルモン活動家、モルモン教会についての研究者などが多数出演しています。有名なサンドラ・ターナー女史も出演していました。(マイケル・クイン氏も出ていると聞いていたのですが、ナレーションではリチャード・クレーン氏と紹介されていました。この点は確認が取れていません)

この中でモルモンが人を不幸にする第一の理由として挙げられているのが、人は神のようになれるというモルモンの教義です。もう少し詳しく説明すると、モルモンで言うところの永遠の生命とは、人は死んだあとの世界で神の国に入るということではなくて、文字通り神となって宇宙の星々を統治するということであり、それを実現するためには、モルモンの神殿で結婚し、モルモン教会の教えに完全に忠実な一生を過ごさねばならないということなのです。そして、この教義が多くの不幸を生んでいると訴えています。

モルモンでは神殿で結婚した家族は、忠実であるならば永遠の家族となり、共に神の国に住むことができると教えています。この教義は多くの人にとって魅力的に受け止められ、実際、モルモンの家庭のほとんどはこのことをよりどころに日々生活しています。しかし、家族の中の一人でも教会の教えに積極的でなくなってきた場合、この教義はいろいろな悲劇を生む可能性を孕んでいます。その人は家族との関係を永遠に断ち切られてしまうのか?家族が崩壊してしまうのか?といった不安にさいなまされることになります。もし自分の伴侶がモルモン教会に熱心でなくなったらどうするか?そんな人と一緒に暮らしていても永遠の家族は築けない、いっそ離婚してモルモンに忠実な他の人と再婚したほうがいいのでは?という考え方が生まれてくることにもなります。このビデオの中では、モルモン教会の監督から実際に離婚を勧められたといくつもの家族が証言しています。

人は神のようになれるという教えは、とらえかたによっては人の価値を認め、人生に対する肯定的な視点を与えるものだと言えるかもしれません。しかし、それを達成するためにはモルモン教会の教えに完全に忠実でなけらばならないとしていることが大きな問題を生んでいます。ビデオのなかである少年の自殺が取り上げられています。成績も優秀でまじめな子供だったキップと名の少年が、男女交際に関するモルモン教会の厳格な教義や指導についていけず、悩みぬいて自殺したと言う出来事でした。彼の兄弟は「キップは教会の教えをまともにとらえすぎたのです」と語っていました。

モルモン教会員は教会に忠実でなければ救われず、忠実であれば悩みぬいて自殺にまで追い込まれます。これがモルモン教会の実態なのです。ビデオではこうしたモルモン教会の姿は、表面的には模範的なクリスチャンのように見えるが、その教義は伝統的キリスト教とは全く異なることを説明しています。まず、天の父なる神がかつて人間であったが完全な生涯を送られたので神となったというモルモン独特の教義をアニメーションで紹介しています。そしてモルモン書がジョセフ・スミスの創作物であることを、歴史学、考古学研究者の証言を交えて追及しています。

ビデオの出演者の一人はこうした理論だった指摘をしても、聞く耳を持たないモルモン教会員がいることを良く分かっているようでした。彼は、「モルモンの人たちはきっとこう言うでしょう。私はジョセフ・スミスの言ったことがすべて間違いであったとしてもこの教会に確信を持っています。胸に燃えるものがあるからです」と語っていました。この「胸の奥で燃えるもの」は、たとえば宣教師がモルモン書を渡すときにもよく使われる言葉です。

ビデオの中では神殿の儀式もごく一部ですが正確に再現されていました。(ビデオのように真っ暗な部屋で行うのではありませんが) ただし、このビデオ作品が公開された数年後、モルモン教会は儀式の内容を変更しています。このビデオ作品の存在が影響を与えたのかどうかは定かではありませんが、考えられなくはありません。神殿の儀式を再現するということは、この作品に出演しモルモンの問題を訴えている人々が実際にモルモン教会に在籍していたことの証拠でもあり、彼らの強い意思表示でもあります。

ビデオのラスト近くでは、法律事務所の人がこの件は訴訟になりませんと言います。宗教は法律によって保護されているので、おかしなことを信じていてもそれだけでは何の罪にもならないからです。またモルモン教会の財政力は一個人が訴訟の相手にするには大きすぎるという問題もあります。しかし、キップ少年の遺書を父親が読み上げるところではモルモン教会の深刻な問題を放置してはおけないという強い気持ちにかられました。

以上のような内容で約1時間でした。観終って初めて気がついたのですが、タイトルの「神を造る人々」には2重の意味が込められているようです。一つは独自の教義で伝統的キリスト教とは違う「神」を造りだしたモルモン教会という意味、もう一つは人は神になるというモルモンの教義が「神」を造りだすものであることです。製作者に聞いたわけではなく推測ですが。

このビデオはモルモンに対する批判物ですが、それはモルモン教会が特異な教義や神殿の儀式、モルモン書を持っているから批判しているのだと思うと事実を見誤ります。モルモン教会にかかわった人がみな幸福になっており、傷つく人や自殺に追い込まれる人が生まれるような宗教でなければ、誰も批判はしないのです。宗教上の解釈をめぐる論争はあるでしょうが、モルモンをカルトだと言う人はいないでしょう。実際には、モルモン教会では程度の大小はあっても現実にあちこちで人が不幸になっています。だから厳しく批判されるのです。モルモン教会が唯一まことの教会だからサタンの攻撃を受けているのではありません。唯一まことの教会だと信じ込んで現実を見ない教会員たちが大勢いるので、その思い込みを打ち砕くためにモルモン書や教義の矛盾点が指摘されているのです。

モルモン教会はこのような状態のままであり続けるのでしょうか、それとも改善されていくのでしょうか。現在の教会の制度から言えば、幹部たちの判断で教会の方針は決定され、一般会員は何も口をはさむことができません。しかし、私にはモルモン教会内の愛する人々がこれ以上不幸に追い込まれないように、モルモン教会の改善を訴えることに尽力したいと言う思いがあります。このビデオは、私がそうした思いを持ち続けることに全く意味がないわけではないことを、改めて認識させてくれるものでした。

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